不惑の年齢になり、気づいたときには、古典から生きるための知恵をいただきました。
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〔出典〕 『列子』天瑞


《中国古代の杞の人が天が崩れ落ちてきはしないかと心配したという、「列子」天瑞の故事から》心配する必要のないことをあれこれ心配すること。取り越し苦労。「―に終わる」

杞國、有人憂天地崩墜、身亡所寄、廢寢食者。又有憂彼之所憂者。因徃曉之曰、天積氣耳、亡處亡氣。若屈伸呼吸、終日在天中行止。奈何憂崩墜乎。

杞(き)の国(くに)に、人(ひと)の天地(てんち)の崩墜(ほうつい)して、身(み)寄(よ)する所(ところ)亡(な)きを憂(うれ)え、寝食(しんしょく)を廃(はい)する者(もの)有(あ)り。又(また)彼(かれ)の憂(うれ)うる所(ところ)を憂(うれ)うる者(もの)有(あ)り。因(よ)って往(ゆ)きて之(これ)を暁(さと)して曰(いわ)く、天(てん)は積気(せっき)のみ、処(ところ)として気(き)亡(な)きは亡(な)し。屈伸(くっしん)呼吸(こきゅう)の若(ごと)きは、終日(しゅうじつ)天中(てんちゅう)に在(あ)りて行止(こうし)す。奈何(いかん)ぞ崩墜(ほうつい)を憂(うれ)えんやと。

其人曰、天果積氣、日月星宿不當墜耶。曉之者曰、日月星宿亦積氣中之有光耀者。只使墜、亦不能有所中傷。

其(そ)の人(ひと)曰(いわ)く、天(てん)果(は)たして積気(せっき)ならば、日月(じつげつ)星宿(せいしゅく)は当(まさ)に墜(お)つべからざるかと。之(これ)を暁(さと)す者(もの)曰(いわ)く、日月(じつげつ)星宿(せいしゅく)も亦(また)積気中(せっきちゅう)の光耀(こうよう)有(あ)る者(もの)なり。只(たとい)墜(お)ちしむるも、亦(また)中(あた)り傷(やぶ)る所(ところ)有(あ)る能(あた)わじと。

其人曰、奈地壞何。曉者曰、地積塊耳。充塞四虚、亡處亡塊。若躇歩跐蹈、終日在地上行止。奈何憂其壞。

其(そ)の人(ひと)曰(いわ)く、地(ち)の壊(くず)るるを奈何(いかん)せんと。暁(さと)す者(もの)曰(いわ)く、地(ち)は積塊(せっかい)のみ。四虚(しきょ)に充塞(じゅうそく)し、処(ところ)として塊(かたまり)亡(な)きは亡(な)し。躇歩(ちょほ)跐蹈(しとう)するが若(ごと)きは、終日(しゅうじつ)地上(ちじょう)に在(あ)りて行止(こうし)す。奈何(いかん)ぞ其(そ)の壊(くず)るるを憂(うれ)えんと。

其人舍然大喜、曉之者亦舍然大喜。

其(そ)の人(ひと)舎然(せきぜん)として大(おお)いに喜(よろこ)び、之(これ)を暁(さと)す者(もの)も亦(また)舎然(せきぜん)として大(おお)いに喜(よろこ)ぶ。

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〔出典〕 『列子』説符の注解(林希逸『沖虚至徳真経鬳斎口義』)


うたがう心が強くなると、なんでもないことが恐ろしく感じられたり、うたがわしく思えたりする。
〔列子、説符〕
人有亡鈇者、意其鄰之子、視其行歩、竊鈇也。顏色竊鈇也。言語竊鈇也。動作態度、無爲而不竊鈇也。俄而抇其谷、而得其鈇、他日復見其鄰人之子、動作態度、無似竊鈇者。

人(ひと)に鈇(ふ)を亡(うしな)える者(もの)有(あ)り、其(そ)の隣(となり)の子(こ)を意(うたが)う。其(そ)の行歩(こうほ)を視(み)るに、鈇(ふ)を窃(ぬす)めるなり。顔色(がんしょく)も鈇(ふ)を窃(ぬす)めるなり。言語(げんご)も鈇(ふ)を窃(ぬす)めるなり。作動(さくどう)・態度(たいど)、為(な)すとして鈇(ふ)を窃(ぬす)まざるは無(な)し。俄(にわ)かにして其(そ)の谷(たに)を抇(ほ)りて、其(そ)の鈇(ふ)を得(え)たり、他日(たじつ)復(ま)た其(そ)の隣人(りんじん)の子(こ)を見(み)るに、動作(どうさ)・態度(たいど)、鈇(ふ)を窃(ぬす)めるに似(に)たる者(もの)無(な)し。

〔鬳斎口義〕

此章猶諺言。諺曰、疑心生暗鬼也。心有所疑、其人雖不竊鈇、而我以疑心視之、則其件件皆可疑。

此(こ)の章(しょう)は猶(な)お諺言(げんげん)のごとし。諺(ことわざ)に曰(いわ)く、疑心(ぎしん)、暗鬼(あんき)を生(しょう)ず、と。心(こころ)疑(うたが)う所(ところ)有(あ)れば、其(そ)の人(ひと)鈇(ふ)を窃(ぬす)まずと雖(いえど)も、我(われ)疑心(ぎしん)を以(もっ)て之(これ)を視(み)れば、則(すなわ)ち其(そ)の件件(けんけん)皆(みな)疑(うたが)う可(べ)し。

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〔出典〕 諸葛亮「出師表」

生き残るか滅びてしまうかという危ういせとぎわ。

臣亮言。先帝創業未半、而中道崩殂。今天下三分、益州疲弊。此誠危急存亡之秋也。

臣(しん)亮(りょう)言(もう)す。先帝(せんてい) 創業(そうぎょう)未(いま)だ半(なか)ばならずして、中道(ちゅうどう)にして崩殂(ほうそ)す。今(いま)天下(てんか)三分(さんぶん)して、益州(えきしゅう)疲弊(ひへい)せり。此(こ)れ誠(まこと)に危急(ききゅう)存亡(そんぼう)の秋(とき)なり。

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載營魄抱一、能無離。專氣致柔、能孾兒。滌除玄覽、能無疵。愛民治國、能無爲。天門開闔、能爲雌。明白四達、能無知。生之、畜之。生而不有、爲而不恃、長而不宰。是謂玄徳。
営魄(えいはく)を載(の)せ一(いち)を抱(いだ)き、よく離るることなからん。気を専(もっぱら)にし柔(じゅう)を致し、よく嬰児(えいじ)たらん。玄覧(げんらん)を滌除(てきじょ)し、よく疵(きず)なからん。民を愛し国を治め、よく無為(むい)ならん。天門(てんもん)開闔(かいこう)して、よく雌(し)たらん。明白四達して、よく無知ならん。これを生じ、これを畜(やしな)う。生じて有せず、なして恃(たの)まず、長じて宰(さい)せず。これを玄徳(げんとく)と謂う。

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持而盈之、不如其已。揣而鋭之、不可長保。金玉滿堂、莫之能守。富貴而驕、自遺其咎。功成名遂身退、天之道。
持(じ)してこれを盈(み)たすは、その已(や)むにしかず。揣(きた)えてこれを鋭(するど)くすれば、長く保つべからず。金玉(きんぎょく)堂に満つれば、これをよく守ることなし。富貴にして驕(おご)れば、おのずからその咎(とが)を遺(のこ)す。功(こう)成り名遂(と)げて身退(しりぞ)くは、天(てん)の道なり。

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